欲求
desire
濃厚な夜に絡みつく湿った空気。
昼間の煌めく眩しさが一転して、漆黒の海にさざ波が立ち、月夜がゆらゆらと静かに降り注ぐ。
友人達と訪れた海辺のペンションは、今はすっかり静まり返っている。
ハシャギ過ぎた昼間の疲れを持てあまし、眠れない気分で裸足のまま砂浜を歩いていると、砂の上に腰を下ろす男を見つけた。
「どうした?」
「眠れなくて」
「俺も」
微かに笑って見上げてくる男は海パン姿で、日に焼けた素肌に月明かりが落ちて、彼の上半身に私の影を作った。
普段大学の構内で見ている時はわからなかった、意外と筋肉質な身体を持つ男の隣に腰を下ろす。