夢中パラダイス!?
それは、あの人の手には何もなかったということ。
何か忘れ物をしたはずなのに、何も持っていなかった。
しかし、その先でその理由がわかった。
それが見えた瞬間に、私は物陰に隠れたのだ。
そこにいたのは、先程私に話しかけてきた人物。
そういうことか。
あの人は感がいい。・・・確か。
私が遅れ気味で美術室へ来たことの理由がどことなく引っかかっていたのだろう。
だから、あの女のことが心配になって、こっそり見に行ったという訳だろう。
案の定、あの女は廊下の壁にもたれかかったまま泣いていたのだ。
私のせいか?
でも、それ以上に私は・・・っ
どうやら、王子様が来てくれたおかげで少し元気になったのだろう。
ゆっくりと自分の教室へ戻って行った。
私も早く美術室へ戻らなければ。
自分のカバンの中から絵筆をだし、美術室へ向かう。
そして、授業が始まった。
「今日は、皆さんにあるものを描いてもらいます。」
今日はどうやら課題があるらしい。
今までは、自分たちで見つけた場所で風景画を描くというのが多かった。
しかし、今日は違うようだ。
「皆さん、自分自身をテーマに描いてください。ただし、自画像ではありません。」
自画像ではない?
つまりは・・・―――
「自分をものに例えて描くのです。時間はこの時間を含め3時間分です。人に自分は何に似ているのか聞いてもかまいません。では、各自で始めてください。」
やはり、そういうことらしい。
私のやる気が一気に低下した。
なぜだろう。やる気になれない。
なぜだか、描きたくない・・・。なぜ・・・?
そして気が付けば、大好きな美術の授業が終わっていた。