夢中パラダイス!?
ここで、香織の手紙は終わっていた。
香織の気持ちがたくさん伝わってきた。
きっとまだまだ言いたいことはあったのだろう。
よく見ると、手紙には鉛筆の筆跡がたくさんあった。
何度も書いては消して、書いては消しての繰り返しでこの文章にたどり着いたのだろう。
私は、窓の近くへ行った。
そして、カーテンを開けて外を眺める。
外には、たくさんの星たちと大きな満月が一つ、夜空の中で輝いていた。
香織。
きっと、香織に私のこの気持ちが届くと信じて
昨日最後に言えなかった言葉を今言うよ。
ありがとう―――
『キャンッ』
「えっ!?」
その時、私の部屋を訪れてきたのはシロだった。
でもどうしてここへ?
「シロ!」
「柏木?」
「あ、お嬢様。申し訳ございませんっ。シロが急に走り出したものですから。」
「シロ、どうかしたのか?」
『ハァハァッ』
『ハァ、ハァ、ハァ』
「柏木もそうとう疲れているようだな。シロと同じように。」
「簡単な追いかけっことはわけが違うのですよ?」
「そうだなっ」
シロと柏木がおもしろくて思わず笑ってしまった。
本当に、シロは。
薫、シロはこんなにも元気だぞ?
薫は、今何を想っているのだ?
「シロ、ハウスに戻れ。」
『クゥン』
「また行くから。傍にいてやるから。」
『キャンッ』
勢いよくしっぽを振り始めたかと思うと・・・
「あっ!シロ~!」
瞬く間に走って行ってしまったシロ。
それを追う柏木。
今夜は大運動会らしい。