夢中パラダイス!?

「こんなこと、姫乃に言う必要ないじゃん。でも言わないといけないような気がしたから。」


いまだに私の体は固まったままで、何も話すことができなかった。


言いたいことはたくさんあった。


もう、私諦めついたから―――

薫にこれ以上迷惑かけないようにするから―――

もう、話さないようにするから―――



そんな言葉たちははかなく消えいった。


私の頭の中は真っ白だった。

何も、言葉が浮かんではこなかった。



「そろそろ授業始まる時間だな。先に教室戻ってるから、あとで来いよ。じゃっ」



先に教室へ戻っていく薫の背中を見ながら、私の頬を一粒の涙が流れた。


ここで立っていても何も変わらない。
そんなことはわかっているのに、足が動かない。


どうしたら、いいの?


その時、聞こえないはずの声が聞こえてきた。
それは、ほんの少し前まで聞こえていた、あなたの声。


―――前に進め。立ち止まっても、そこには何もないんだから―――



不思議なくらい、その声は私の心の中にスッと入りこんできた。

前に、前に進まなければ。


―――未来には、きっと幸せがあると信じて―――



未来、を信じる。



そして私は、一歩、足を踏み出した。




教室に着くと先生がちょうど来たところだった。

そして、授業もちゃんと受けた。
さっきのことは気にはなっていたが、なぜか、授業に集中できた。


でも、授業が終わると、先程と同じ感覚に襲われる。


< 138 / 215 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop