夢中パラダイス!?
案の定、絵筆を忘れてパニック状態だったらしい。
本当に、世話のやけるお嬢様。
本当にこれから半年間大丈夫だろうか。
僕がいなくなってもお嬢様はちゃんと生活していけるだろうか。
そんなことを考えていると、美術の時間はあっという間に終わっていた。
そして、放課後。
姫乃に『行ってくる』と言えるわけもなく、仕方なく柏木に頼むことにした。
「なるべく、優しく頼みます。きっと、お嬢様はショックを受けると思いますから・・・。」
「わかりました。薫さんは本当に優しい方ですね。お嬢様が好きになる理由がわかります。」
「ありがとうございます。では、お嬢様をよろしくお願いします。」
「はい。かしこまりました。」
そして、僕は凛々香のところへ向かおうとした。
でも、その前にもう一つ柏木に頼みたいことがあった。
「あ、柏木さん。」
「はい?」
「お嬢様にもう一つ伝えていただけませんか?」
「はい。何でしょう。」
「お嬢様だけですよ、と。それだけ伝えてください。では、失礼します。」
柏木さんは、何が何だかわかっていないようだった。
でも、それでい。
きっと、姫乃には伝わるだろうから。
そして、凛々香さんのところへ急いだ。
「凛々香さん!」
「薫くん。」
「お待たせしました。」
「いえ、こちらこそごめんなさいね。もしかして姫乃さんとどこかに行く予定でした?」