夢中パラダイス!?

「き、みは・・・」


その声の主は、姫乃だった。



目の前には姫乃と、初めて見た『かおる』がいた。


「姫乃さん、お久しぶりね」


凛々香お嬢様が話し始めた。



姫乃は相変わらずおどおどしている。

きっと、このままだと、まずいことになりそうだ。



そして、その予感は的中した。


まず、凛々香が姫乃の隣にいる人物が姫乃の彼氏だということを知る。


そしてその人物の名前が「かおる」だということを知る。



そこまでなら、あとで何とでも話ができた。

でも、問題はそのあとだったんだ。



「富士凛々香」


その言葉を聞いた、姫乃が目を見開いた。


一番まずいことになる、そう思った僕は思わず「鬼城さん!」

と叫んでいた。


まだ、名前は呼べない。

呼ばない。



「すみません。お二人の邪魔をしてしまって。凛々香、もう行こう。」

初めてお嬢様のことを呼び捨てにしたと思う。


それでも、今はそんなことよりも姫乃のことが心配だった。

今も放心状態と言ったところだろうか。



もしも今、姫乃が僕のことを忘れているのなら、その方がいいと思った。

今の姫乃には『かおる』がいるから。


姫乃が望んだことだろうから。

なら、今はこのままの方がいい。


だから僕らは、そのまま二人の前から消えたんだ。


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