夢中パラダイス!?
シロは私の部屋まで一人で来たのだろうか。
でも、私の部屋は3階。
ここは1階だ。
この体であそこまで来るのはとても無理な話だ。
なら、どうやって・・・
あ、香織っ―――
「香織がシロを見つけてくれたのかもしれない。」
「香織って、さっき言ってた?」
「香織はいつもシロがいなくなっても見つけてくれた。」
「どこにいたとか、聞かなかったのか?」
「それが、いつもシロは部屋の前にいるのけど香織の姿はなかったんだ。だから聞けなかった。」
「なんだ、それ。」
でも、そうなのだ。
いつも、香織はいなくて、でもその代りシロがいて。
シロがいなくて、香織がいる、という感じだった。
「柏木!」
「はい、お嬢様。」
「シロはいつもここにいたのか?」
「えぇ、いました。」
「柏木がシロを見ていない間は、だれが見ていた。」
「私がお世話を担当していましたので、他には誰も。私もずっとつきっきりではありませんでしたが。」
「そうか・・・。シロ、お前は・・・」
お前は―――
香織なのか?
「お嬢様、薫さん。そろそろお出かけされる支度をされますか?」
「えっ」
「シロは柏野に任せましょう。それなら問題はないでしょう。」
「でも」
「心配なのはわかりますが、お二人の時間も大切にしてください。」
「柏木・・・。ありがとう。」
「いえ。薫さん。」
「はい。」
「そんな顔をしないで、楽しみましょう!これからを!」
「・・・っありがとうございます」
薫の表情は暗いままだったが、柏木の言葉で少しだけ明るくなったような気がした。
そして、出かける支度を始める私と香織。
気が付けばもうお昼が来ていた。