夢中パラダイス!?
凛々香とお兄さんの話が、この上なく長い。
時折お互いに笑いながら話をしていた。
そんなにも面白いことがあったのだろうか?
私と薫の説明で。
楽しいことは構わないのだが、そろそろ時間が無くなってくるころだ。
「香織くん、姫乃さん。こっちに来たら?」
「いや、二人の邪魔をしたら悪いでしょう。」
「邪魔だなんて、そんなことないわ。ね、かずくん。」
「あぁ。どうぞ、こちらに。」
かず、というお兄さんは私たちに優しく笑いかけてくれた。
お言葉に甘えて、ということで凛々香とお兄さんのところへ移動した。
「自己紹介をまだしてませんよね。僕は佐野和馬(さの かずま)といいます。凛々香の恋人です。」
「和くんのいれるコーヒーは世界一おいしいよね?」
「そんな、お世辞ばっかりの言葉いらないよ。」
「お世辞じゃないから。」
二人がまた会話を始める。
「本当おいしんだもの。」
「ありがとう。」
会話に入れないまま、時間だけが経っていく。
もう、このままコーヒーは飲まずに、と思っていたとき。
「あ、そうよ、コーヒーいれてあげたら?」
「そうだな。あ、すみません、長らくお待たせして。」
「「いえ、とんでもありません」」」
私と薫の声がハモる。
「さすがね。二人とも。」
「で、何にしましょうか?」
「・・・私は、このコーヒーで。」
「僕は、こっちので、ブラックにしてください。」
「かしこまりました」と言ってコーヒーをいれ始める和馬さん。
その間も凛々香はずっと和馬さんを見ていた。
和馬さんを見つめる凛々香はとてもきれいだった。
一途に恋をしている女の子の顔、にふさわしいくらいに。
なら、なぜ和馬さんは凛々香のためにバイトを休まないのだろうか。
きっとお互いにデートをしたいと思っているだろう。
好きなもの同士なのだから。
「凛々香。なんで和馬さんはここで働いているの?」
「・・・それは秘密よ。」
「そんなこと言わないで、教えてよ。」
「・・・あなたたちみたいなものよ。」
「私たち?」