夢中パラダイス!?
それはつまり・・・
「凛々香の執事なのか?」
「いえ、ただの普通の人よ。」
そういうことか。
「有名な富士家のお嬢様に恋をしてしまった男の子。それは、家柄も学歴も何もかもが普通で当たり前な男の子。それでもお嬢様も男の子もお互いに惹かれあった。」
凛々香が自分たちのことを話していく。
その話は、とても切なくて、でもどこか温かかった。
「だから、彼は決心した。『お嬢様にふさわしい人になって、お嬢様を必ず幸せにする』と。そして、お嬢様の父親は次のように言った。」
―――君が学校を卒業するまでに、凛々香にふさわしい男になってみろ。
「彼は、今私のために一生懸命頑張ってくれているの。」
凛々香が少しだけ目を細めて和馬さんを見る。
その目にはうっすらと涙が浮かんでいた。
それでも、凛々香は涙を流そうとはしなかった。
「学園を卒業するまでよ?長すぎるわよ。」
「和馬さんは今何年なの?」
「私たちと同じ。だから、あと少しなのっ。」
ということは、もう何年もこんな関係を保っているというのか。
こんなこと、私ならきっとできないことだろう。
でも、凛々香も和馬さんもお互いを愛し合っているからここまで来れたのだろう。
そう考えると、私はまだまだ子供に思えた。
「凛々香はすごいな。」
「私だけがすごいんじゃないの。和くんもすごいの。お互い一緒に頑張った先にはきっと幸せが待ってる。そう信じてここまで来たの。」
凛々香の一言一言が私の心に響いていく。
そして、和馬さんが私たちのもとにコーヒーを持ってきてくれた。
「お待たせしました。どうぞ。」
「「いただきます」」」
私と薫はそれぞれのコーヒーを口にする。
そのコーヒーの味は違っても、きっと薫も私も同じことを思っているだろう。
「すごくおいしい。」
「僕のも、とてもおいしいです。」