夢中パラダイス!?
「それはよかった。」
和馬さんの笑顔が一段と輝きを増した。
このコーヒーの中には、きっと和馬さんの優しい気持ちが隠し味で入っているのだろう。
コーヒーはとても暖かかった。
その温かさは、きっと、その隠し味のおかげだろう。
「姫乃、そろそろ行かないと。」
「え、あ、時間がない。」
「どこかに行くの?」
「明日薫は日本を発つから、その前にデートを・・・ね。」
「そっか、薫くん頑張ってね。」
「はい。凛々香さんにもお世話になりました。」
「私は何もしてないわ。じゃぁ、また帰ってきたときにでも会いましょ。」
「はい。じゃぁ、お二人も頑張ってください。」
「「ありがとう」」
「またコーヒー飲みに来ますね。」
「いつでもどうぞっ。」
「では、また」
私たちは和馬さんと凛々香はまだ話すだろうと思い、会計係は別の人にしてもらうことにした。
二人が仲良く会話をしている中、私たちはカフェを後にした。
駐車場に向かうと、そこには柏木が何やら焦っているようだった。
「どうした、柏木」
「あ、お嬢様。薫さんお帰りなさいませ。なんでもございませんのでお気になさらず。では、お車に乗ってください。」
どこかおかしい柏木を気にしつつ、車に乗り込む。
おそらく何かあったのだろう。
ここで柏木の気遣いが少しめんどくさいと思ってしまう。
「柏木、何かあったのだろう。」
「いえ、何も。次はどちらへ?」
「柏木!」
黙り込んでしまった柏木に、不信感を抱き続ける私、
そして、やっと柏木が口を開く。
「とにかく時間がありません。先程電話がありまして、薫さんのお父様が夜の8時までには帰って来いとのことで・・・」
8時。
あと6時間ほどだった。