夢中パラダイス!?
だって、シロはいつもここにいるではないか。
なら、『来た』という表現はおかしい。
「僕は、もうおそらくここへは来られない。だから、最後のあいさつです。」
「よくわからない。どういうことか説明してくれ。」
「時間がありません。ですから説明はできません。」
「なぜだ!」
「お嬢様、僕は今日本当はあの場所でこれを探していました。」
香織の手にあったものは一枚の写真。
その写真はとても古いもので、色も褪せていて見えづらいものだった。
「この写真は?」
「・・・さぁ。」
「さぁって。誰だ、この2人は。」
「さぁ。でも、お嬢様ならいつかわかるはずです。」
「意味が分からない。なら、なぜ、この写真を探していたのだ。」
「秘密です。」
「なぜだっ」
「さて、そろそろ行きますね。」
「待てっ、話はまだ」
「もう終わりです」
そう言ってそっと自分の手を私の左胸にあてる香織。
「なにっ」
「黙って。」
真剣な表情で私を見る香織。
「楽しかったです。また会いましょう。では、さようなら。」
「かおっ・・・る・・・―――」
まだまだ聞きたいことがあった。
話したいことがあった。
でも、私の意識はそこで途切れた。
そして、頭の中が少しだけ軽くなった。
それはどこかの記憶がなくなってしまったような、そんな感覚だった。
シロ―――
香織―――――。