夢中パラダイス!?

「なに?」

「はい、か、いいえ、で答えてほしいことがあるの。」
「あら、なにかしら?」


それは、今の私がそうだから。

だから、母さまにも聞いてみたかった。
母さまと父さまの、私たちくらいだったころの話を。


「母さまと父さまは私と薫のように一緒に壁を乗り越えて今こうやって暮らしているのでしょ。」

「はいっ。そうよ?」


「・・・壁を乗り越えるまで」



辛かったり、悲しかったり、苦しかったりしましたか―――?


そこで母さまが立ち止まった。

「母さま?」


母さまが私をじっと見つめる。

そして、母さまが返事をくれる。
優しい笑顔と共に。


「えぇ。とっても、とっても辛くて、悲しくて、苦しかったわ。」


「でも今は、幸せ?」


そして、母さまは一言だけ一番明るい声で言ってくれた。



「幸せよっ。」





食堂へ着くと、そこには一人先に椅子に座っている父さまがいた。

「姫乃、おはよう。」

「おはよう、父さま。」


「さて、食べようか。」


目の前にはいつもと変わらない、美味しそうな朝食が並んでいた。

そして、その朝食を3人で食べる。


いつもと変わらず美味しい料理は、今日はさらにおいしく感じられた。


「おいしいっ。」



さっきまで心にぽっかりと空いていた穴が少しだけ満たされたような気がした。


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