夢中パラダイス!?

その時、私の名前を呼んだのは―――


「父さま・・・」

「間に合ったか。」


「薫くん、もう時間かしら?」

「・・・えぇ。」


「薫。」


そこに薫のお父様とお母様も走って向かってくる。

「まだいたのか。早くいきなさい。」

「父さん・・・俺」
「姫乃お嬢様と一緒に、か」

その言葉に薫が固まってしまう。

私はその光景を見ていることしかできなかった。


声をかけられなかった。

いや、かけてはいけないような気がした。



「いきなさい。」

「父さん!」

「なら、今のお前にお嬢様を護っていけるのか?」
「っ・・・」

「養っていけるのか。」

「・・・・・・」


薫の表情が徐々にひきつっていくのがわかった。

お父様の言っていることは全て正しいこと。
だから薫は、アメリカへ行くのだ。


今の薫に足りないものを見つけるために―――


「薫、いきなさい!」

「わかったよっ!」


薫がやっと声を出した。

下を向いたまま、一言だけ叫ばれた言葉。


その言葉はとても重かった。


「姫乃・・・」

「な、に?」



薫が私の方を向く。

そして、私は気が付くのだった。

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