夢中パラダイス!?
もっといろいろなことを聞かれたら、と思うと少し背中がぞくっとしたのだが。
私も自分の席に着こうとしたとき―――
あの声が聞こえた。
「あ!おはよう!薫くん」
教室の皆が薫に気が付く。
私もそのうちの一人だ。
「おはよ」
薫の声が聞こえる。
「今日はなんで姫乃と一緒に登校しなかったの?あ、もしかして、喧嘩とか?」
そんなこと、聞かないでくれ・・・。
そう思ったのは私だけだったのだろうか。
「まぁ、今日はお互い用事があったから。」
そう言って、質問をさらっとかわす薫。
『お互い用事があった』
そんなこと、あるわけないのに。
「薫くん、なんかいつもと雰囲気違うね。」
「あ、確かに。いつもはもっと明るいよね。」
「やっぱりなんかあったんじゃね?」
「薫と姫乃だろ?やっぱ、喧嘩じゃね?」
今日に限って周りの声が大きく鮮明に聞こえるような気がした。
これから毎日、こうやって過ごしていくのだろうか。
でも、これは想定していたことだ。
これから、頑張らなければならないんだ。
そう思っていた。
そう、この時は。
この後起きることなど、だれも予想していなかっただろう。
再び私の悪夢が始まろうとしていた。