夢中パラダイス!?
凛々香が私に話しかけてきたことによって余計に悲しくなった。
すぐ隣に薫がいるのに、何も話してこない。
私のことすら見てくれていないような気がする。
「じゃぁ、私は教室に戻るわね。じゃぁね、薫、姫乃さんっ。」
え?―――
今、凛々香は何と言ったのだ?
『じゃぁね、薫』
初めてだった。
薫のことを呼びすてにする女子を見たのは。
私はその場から動けなかった。
凛々香が教室へ戻ってからも、薫が私の隣からいなくなっても。
「あれ?姫乃ちゃん?なんでこんなところにいるの?」
この時声をかけてきたのは、同じクラスの男子だった。
あまり、話したことはなかったが私がこうやって突っ立っているのを不思議に思ったのだろう。
「あ、いや・・・。なんでもない。」
「ふ~ん。薫と喧嘩中なわけか。」
「そんなんじゃない!」
思わず、強めに言ったしまった言葉は廊下中に響いた。
「そんなに怒らなくても。早く教室入れよ?」
その男も教室の中に入って行ってしまった。
廊下にはもうほとんど生徒がいなかった。
各教室に戻っていった。
私も、とりあえず教室に入り席に着くことにした。
そして、薫の方をチラリッとみてみた。
そこには、いつもと何ら変わりない薫がいた。
周りの男子たちや、時に女子たちと楽しそうに話していた。
そんな光景を見ながら、私の頭の中は先程の凛々香の言葉が浮遊していたのだ。
いつのまに薫と凛々香はあんなにも仲良くなったのだろうか。
私が知らない間に。
やはり、薫は私ではなく・・・
「姫乃」
その時私の隣から声がした。