蠱惑【密フェチSS集】
海岸に咲くブーゲンビリアの茂みに隠れて、じっと息を潜める。
白い砂に容赦なく照りつける太陽は眩しいけど、この茂みは緑に覆われていて、海からの風が心地いいの。
海にはサーフィンしている人が何人かオットセイみたいに浮いている。彼の姿はまだないみたい。
ああ、胸がドキドキする。
膝を抱えてワンピースの裾をキュッと握りしめた。帽子が飛ばないようにおさえて、息を潜める。
夏休みの間は毎年、この海岸に近い別荘に遊びに来ている。
海岸を散歩していたら、絵を描いている彼に出逢った。
白いシャツに短パン、スニーカーから顔をだす綺麗なくるぶしまで日に焼けていて……じっと見つめてしまった。
麦藁帽子から顔をあげた彼が、くるぶしを見つめる私に気がついて不思議そうな顔をした。
慌てて「その絵、素敵ですね?」と言うと、「ありがとう」とキラキラした笑顔が返ってきた。
それから、私は彼を探すためだけに毎日毎日海岸を散歩した。
何度も顔を合わせて、彼からもらった絵を部屋に飾り、今日は生まれてはじめてのデートの約束をした。
「なにしようか?」と言った彼に「かくれんぼ」と答えた。
砂がぎゅっぎゅっと押しつぶされる音が聞こえてきて、私の鼓動はますます早くなる。
茂みから見えるスニーカー……彼がきた。
短いソックスから日に焼けたくるぶしが、綺麗に浮き出てる。
細い足首から、伸びるスラリとしたふくらはぎも素敵だけど、私は断然丸くて可愛いくるぶしが好き。
いつか、触れてみたい……その、くるぶし。
「みーつけた!」
彼の手が優しく私をブーゲンビリアの茂みから連れ出す。
「もう見つかっちゃった!」
「うん、でも約束だからね……」
────見つけ出したら、キスするよ?
海風が吹いて帽子を押さえた隙に、彼の唇が触れた。
生まれてはじめてのキス。
─────かくれんぼEND