蠱惑【密フェチSS集】
濃紺のパイロットスーツに身を包み、切れ長の瞳を隠すほど深くかぶった制帽を微調整する。
そして、綺麗な鋭角ラインの顎をL字にあげて前を見て歩き出す。
フロアーにいるキャビンアテンダントもグランドスタッフも整備士も、皆みんなアナタの虜になっちゃう瞬間だ。
「はあ、行っちゃった。相変わらず、かっこいい……」
「うん、パイロットは花形だもんね」
「違うわ、彼のことだけを言ったの。背が高くて端正な顔立ち、おまけにパイロットとしても優秀なんて、非の打ち所がない男ね。
あれで性格が良ければ最高なんだけどね。私、挨拶以外で口きいてもらったことないもの。普通の女なんか、眼中にない! てオーラだしてるわ」
私は、そうかなぁ……と彼の背中を見送る。フライトプランでは、彼はチューリヒ空港に向かうことになってる。帰りは三日後だった。