蠱惑【密フェチSS集】
─────ただいま、と三日ぶりの大好きな人の声が聞こえて私はリビングを飛び出した。
制帽を脱ぐと玄関の靴箱の上に無造作に置いた彼がもう一度、ただいま、とゆっくり言った。
「おかえりなさい!」
三日ぶりの彼は、うん、と無表情に頷いた。
付き合いはじめてまだ一カ月。彼の部屋ではじめて帰りを待っていた。
居心地が悪くて、ずっとダイニングチェアの上で正座してたから足がびりびり痺れてる。
背が高い彼を下から見上げる。不動の魅惑の鋭角ラインはすぐそこだ。
「スイス、どうだった?」
「ん、いつも通りだよ。シャワー浴びてくる」
「うん」
口数が少ない彼から、好きだ、と伝えられて舞い上がって大喜びした私だけど、本当にこの私が彼女でいいのか不安になる。
うちの職場は綺麗な人沢山いるし、それに何より国際線パイロットの彼は、滞在先各国で、沢山の美人に囲まれてたらどうしよう。
だって理知的な顔にその鋭角のラインは、魅力的すぎる。
「脱ぐ……けど?」
「あ、え、はい? ああ、すみません!」