後ろ姿の誘惑
backstyle
「…ん」
ドアの向こうから聞こえる小さな物音が。
はっきりしない私の頭に入ってくる。
目を開けても、カーテンの隙間から漏れる光はなくて。
“寝てしまったんだ”と気付くのに時間はかからなかった。
「…あれ…?」
一人で寝るには大きいベッド。
そこには私が身を預けているだけで。
彼がいたであろう場所は。
温もりだけを残して、誰もいなかった。
シワの寄ったシーツ、乱れた髪。
シーツの感触を直に感じている私の素肌。
私はベッドの端に無造作に置かれていた白いシャツを羽織ると。
光の漏れているリビングへと体を向けた。
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