甘い棘 【密フェチ】
「じゃ、俺はそろそろ帰るかな」
そう言ってパソコンを落とした彼に、ハッと我に帰る。
(何を想像してるんだ私は。
会社の事務所で。しかもこんな朝っぱらから)
「あ、お疲れ様でした……」
慌ててそう言った私の身体を、彼が一瞬抱きしめて耳元でくすりと笑った。
「あんま物欲しそうな顔で男を見ない方がいいよ。
こっちは徹夜明けで、理性が弱ってるから」
(私そんな物欲しそうな顔してた?)
思わず顔を両手で隠すと、彼はまるで試すように、微かに顔を傾けて私を見下ろした。
「今夜は……、予定あるんだっけ?」
そう言ってにやりと笑う彼の顎ヒゲが、今夜私の肌に触れるのを想像するだけで、身震いするほど興奮した。
(とりあえず今夜の合コンはキャンセルだ)
【甘い棘】END