スコープ

「ほんとに…ふわりふわり…蝶々ですよ。あなたは。その後どうなるかとか考えてない。」


浦西はシャツを羽織りながらため息をついた。


「その後？」


「今、お嬢様と私が関係をもったとしましょう。
それが旦那様に万が一ばれた場合、
私の職がなくなります。
更に旦那様は
私が他に就職できないよう根回しをなさるでしょう。
私は働けなくなります。
稼げなければご飯も住むところも失います。

ここまで考えましたか？」



「…」

美春は小さく首をふった。


「更に、

何よりも重要なのが


あなたの身体なんです。」

浦西の口調は強さをます。



「もし万が一、妊娠したらどうするおつもりか…


堕胎したら…身体に傷はつくし…

私とこんな形で結婚して子供も育てるにしろ、
旦那様はこんな形は絶対にお許しにならない。
あの方はそういう順序を重んじますからね。

一人で子供を育てるんですよ。


そりゃすぐに結婚できるかもしれない。



けど



なんていうか…」


浦西はそこで息をつまらせた。

美春は、はっとした。

浦西はうっすら涙を浮かべていたのだ。


「私は



美春お嬢様が


美春お嬢様自身を



大事にしていただきたい！



自分を軽んじる行動は…


あなたを大事に思う人を…傷つけてしまうのです…」



浦西は赤い目で美春にうったえた。


シャツのボタンをとめる手は止まっていた。