声を聴かせて。
声を聴かせて。
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それは、
密かに抱く欲望。
「チーフ、チェックお願いします。」
「ああ」
デスクのパソコンに目を向けたまま、くわえ煙草の“彼”は、部下から書類を受け取った。
私はその姿を、少し離れた角の席から盗み見る。
ここから見る、彼の姿が好きだ。
いつも眉間にシワを寄せ、企画書とにらめっこ。
気付いたら足を小刻みに揺すっている。
私は席を立つと、コーヒーを持って彼のデスクに向かった。
そろそろ欲しくなる頃だ。
「コーヒー、どうぞ」
彼が顔をあげる。
黒髪からのぞく切れ長の瞳が、私をとらえた。
「…あぁ、悪いな。そこ、置いておいてくれ」
だけどすぐに、彼は視線をそらした。
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