声を聴かせて。
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「すみませんでした…会社でこんなこと…」
乱れた服を直しながら、私は彼の方を見ずに言った。
彼が私に視線を向けたのが分かった。
「……明日からは、今まで通りに戻ります。
さっき言ったことも、忘れてください。
…“都合の良い女”なんて、そんなの私みたいな女には務まりません」
あなたと繋がれば繋がるほど、
きっと想いは強くなる。
独占欲が湧いてくる。
なのにあなたは、私の物ではない。
私の物になることは、絶対にないのだ。
…そんなの苦しすぎて、きっと耐えられない。
「…安心してください。
こんなことで、辞めたりとかするつもりありませんから…
この仕事、大変なこともいっぱいあるけど私は好きだし…」
この職場に来た最初の頃。
緊張してなかなか周りと馴染めず、
仕事も慣れなくてミスばかりしていた私は、彼に叱られてばかりだった。
“お前もっと、自信持ってやれよ。
そんなだから周りも不安になるんだ。
もっと胸張っていろ。
新人だろうがベテランだろうが、外から見たら同じ会社の人間であることには変わりないんだ”
彼には叱られてばかりで、最初は恐かったけど…
だけどそこには不器用な彼の優しさもちゃんと含まれていて、だから私は何度だって立ち上がれた。
…いつからだろう。
気付いたら彼のことを、目で追うようになったのは…
気付いたら私は、恋に落ちていた。