好きな人は、天然タラシ。
「もし福嶋さんに彼女がいて、こんなところ見られたら妬かれちゃいそうですよね~」
ドキーッ!
突然出てきた『福嶋さんの彼女』という言葉に、私の心臓は口から飛び出して会社を出て行っちゃうんじゃないかと思うくらい、飛び跳ねた気がした。
私が頼み込んで周りには内緒にしてもらってるから、みんな私たちが付き合ってることを知らないんだ…。
だって、私なんかと福嶋さんが…なんて、恐れ多くて言えない…。
「…いや、俺の彼女なら大丈夫だよ。もし妬いちゃってたとしたら、不安なんか吹っ飛ぶような愛の言葉伝えるから。俺、彼女一筋だし、それをたっぷり教えてあげるだけだからね」
!!!
予想もしていなかった福嶋さんの言葉に、次は心臓が止まりそうになった。
あああ、愛の言葉…!?
「えっ、福嶋さん、彼女いるんですか!?」
「うん。いるよ。すっごく大切で大好きな彼女。」
ひぃぃぃぃ…!
「~~~っこの前までフリーって言ってましたよね!?いつの間に…!ショック~」
「つい最近、やっと手に入れたんだよね」
「どんな人なんですか!?福嶋さんが好きになるくらいだから、きっとキレイな人なんでしょう!?教えてくださいよ!」
田仲さんは『福嶋さんの彼女』のことを根掘り葉掘り聞き出そうとしてる。
…うっ…
ごめんなさい…
歳も結構いってる上に、大した容姿も持ち合わせてません…。
――――って、ヘコむって…
「ご想像にお任せするよ。まぁ、結婚式楽しみにしてて」
!!!!!
「うそっ!!!もう結婚の話まで出てるんですか!?」
「彼女からOKもらえたら、だけどね」
ヒラヒラと手を振って巻くように去っていく福嶋さんを、田仲さんは呆然とした顔で見ていた。