好きな人は、天然タラシ。
―――…
遡って、昨日。
…また仲良さそうに話してる…。
あたしの視線の先にいるのは、朝比奈さんと福嶋さん。
…あたしは福嶋さんのことが好き。
去年この会社に入社した時から、ずっと憧れてる男の人だ。
大人で、でもフランクで、話すと楽しくて嬉しくて、あっという間に惹かれた。
一方、朝比奈さんはお局様とまでは行かないけど、あたしよりも結構歳上の女の先輩。
至って普通の人で美人ってわけじゃないけど、落ち着いてて大人の女性って感じ。
そんな二人が並んでる姿は、大人でちょっと憧れてたりする。
でも、二人が付き合ってないことは確認済み。
「朝比奈さん、今夜空いてる?」
えっ!?
突然飛び込んできた福嶋さんの声に、あたしは敏感に反応した。
「うまいもん、食いたくてさ。付き合ってよ」
うそっ!
福嶋さんが朝比奈さんを誘ってる!?
ななななんでっ!?
福嶋さん、朝比奈さんのこと好きだったりする!?
そんなの、やだ!
仕事の定時直前に聞こえてきた二人の会話に、あたしは飛び付いた。
「えっ!福嶋さんたち、ご飯行くんですか!?私も一緒に行ってもいいですか!?」