好きな人は、天然タラシ。
―――定時に近づいた頃、営業回りに行っていた福嶋さんが会社に戻ってきた。
フロアに入ってきた瞬間、福嶋さんの視線は私にロックオン。
「お疲れっす」
「お疲れさまです」
切れ長の目を細めて笑うその表情は、私の胸をきゅっと締め付けるには十分過ぎるもので。
ドキドキする…。
福嶋さんは外回りから帰ってくると、必ず私に最初に挨拶をするんだけど。
…え?
福嶋さんに気に入られてるんじゃないかって?
…ううん。残念ながら、そんなんじゃない。
この笑顔には、何の意味もないんだ…。
福嶋さんが毎日私に挨拶してくれる理由。
それは、私たちのデスクが隣同士だから。
…ただ、それだけ。