間接的視線【密フェチSS】
Ⅲ
直接よりも間接的な視線が好きなんて、絶対引かれると思った。
なのに。
「なんだ……良かった。嫌いじゃないんだ……。俺、ずっと悩んでて。年下だから、からかわれてるのかな、とか」
「亮……」
「あ~ホッとしたっ!」
ソファーに寄りかかり、天井に息を吐く。
そんなに、悩んでたんだ……。
「ごめん……でも、引かないの?」
何を?という亮は、いい淀む私に察したのか、
「フェチでしょ?俺もあるし。そういうの」
「え……?」
「香り。利くんですよ、鼻。初対面で『モカ』って当てたの覚えてない?」
あぁ。そういえば……。
「さっきの香水も、あの手の匂いが苦手で。だから、お互い様」
ね?と、亮はわざとガラステーブルで視線を反射させた。
「んっ……いきなりズル、い……」
疼き、身をよじる。
仄かに上気する私を、亮は浴室へさらった。
「続きは香水落として、寝室の鏡の前で密に……」
洗面台の鏡越しに視線を絡め、後ろから包んでくる。
「嗅がせてよ、美樹さんを」
熱い息が頬を掠めた瞬間、私は堕ちた。
Fin