蜜の味【密フェチ】
「マスター、あと一杯だけだから」
「これで最後ですよ」
マスターは優しく微笑むと、華麗にシェイカーを振る。長く伸びた黒髪を後ろで束ねているので、首筋がはっきりと見える。
あの香りを、もう一度嗅ぎたい。
「どうぞ」
白濁とした黄色いカクテルを、マスターがあたしに差し出す。
グラスを手に取り、口に運ぶと、レモンの酸っぱい香りと蜂蜜の甘い香りが鼻に届いた。大切な時間を味わうように、あたしはゆっくりとカクテルを飲んでいく。
この店の客層は、マスター目当ての女性客が多い。
マスターが甘い蜜を持つ花ならば、あたしはその蜜に群がる一匹のミツバチに過ぎないのかもしれない。