蜜の味【密フェチ】
「ごちそうさま」
空っぽのグラスを置き、席を立ちあがると、飲み過ぎたせいで体がふらついた。
情けなくて、寂しくて、下を向くと涙が零れそうだった。
「大丈夫ですか?」
いつの間にか、マスターはカウンターを離れ、あたしの目の前にいた。マスターの手があたしの肩を優しく支える。
「好き…」
酔ったせいか、涙と一緒に、そんな言葉を零していた。
あたし…どうかしてる。
マスターの手を振りほどき、逃げ出すように走り出した。
それなのに…
逃げ出すあたしの腕を掴み、マスターはあたしの体を抱きしめた。普段の優しいマスターには考えられないくらい強い力だった。
目の前には、彼の首筋。
鼻を近づけると、彼の香りで全身が火照るように熱くなった。
あたしは甘い蜜を吸い取るように、その首筋にキスをした。