ねぇ、私に染まってよ。
手を伸ばせばすぐに触れられる距離でナオが髪をかきあげる。
だから私も手を伸ばして――。
「すぐ髪触んのな?」
「うん、ナオの髪、好き」
「知ってるか?髪触るのって欲求不満なんだってさ」
「そうかも」
素直に答えたのにナオはやっぱり笑ってた。
「風呂、入る?」
「うん、髪洗ってあげる」
「いいよ、別に」
「洗いたいの」
「変なヤツ」
だってこの髪に触れたいんだもの。
この髪にはシトラスの香りが似合うと思うの。
私と同じシャンプー。
ねぇ、もっと私に染まってよ。