ブルーブラック2
「ただいま」
智はリビングから灯りが漏れてきているのを確認してそう言うと、返答もなく静まり返ったリビングへと様子を窺いながら足を踏み入れた。
「···」
視界に入ってきたのはソファで上半身だけ横になって座りながら眠っている百合香の姿。
化粧も落として着替えも済ませているところを見ると、今日は加減して飲んで帰ってきたことがわかる。
「百合香」
呟くように名前を口にすると、そっと百合香の元へ跪く。
そして少しの間百合香の顔を見つめた後、艶のある黒い髪を大きな手でゆっくりと撫で、とかす。
百合香はその感触で僅かに身を動かしたが、やはり一度寝ると起きないタイプで目は開けることはなさそうだった。