ブルーブラック2
「はは、阿部の言うとおりだ」
「阿部さんの?」
「“女性受けしそうなデザインを”とね。早速目の前の女性が釣れた」
金山が大きな体を揺らして笑いながら言った。
百合香は見事そのデザインに釣られた“女性”だ。
「数年前だけど柳瀬さんが担当されていた時、女性向けの万年筆をオリジナルで生産した時に評判がよかったので」
美雪は少し得意げにそう言うともうひとつあったボトルを手に取った。
「それに、この多角形の面が傾けた時にインクが残りやすくて透かして見るとまたキレイ··」
百合香はやはりここでもボトルを蛍光灯に透かすようにして下から覗いてそう言った。
「じゃあこれで大丈夫ですね」
「中身は以前のお渡ししたもので」
「後はブレンドインクのイベントか―――」
金山が満足そうに言い、美雪が後を続ける。
そして久方ぶりに口を開いた富田の一言に百合香は食いついた。