ブルーブラック2
「はぁ。とにかく、レジに入って。渡辺さんの補佐をしてて」
少し混雑してきたレジに視線を向けて綾は美咲にそう指示を出した。
美咲はその指示に対しても間延びした返事を返してレジに向かう。
綾の前を横切った時だった。
「!!ちょっと···!」
綾が何かに気が付いて美咲を呼び止めた。
美咲はレジに行けと言ったりちょっと待てと言ったり···と不機嫌になりそれが多少顔に出ていたが、今綾が気になるのはそんなことじゃなかった。
「···それっ」
「え?」
綾の視線は美咲の胸元のポケット―――そこにささってある一本のペンだ。
「それ、あなたの?」
「―――はい。少し前に駅前の本屋と併設してるお店で買ったんですけど、何か?」
あまりに堂々とした答えに綾はそれ以上なにも言えなかった。
すると美咲はくるりと背を向けてレジへと入って行った。