ブルーブラック2

(私どこに置いたんだっけ?)


百合香の大切な“桜”

その一本は他の何にも変えられないかけがえのない一本である。


百合香は焦る気持ちで目の前のデスクの上を見た後に、自分の胸ポケットを探った。

しかしそこにも見つからず―――


カウンター内を見回す。
もう一度、先程までの自分の動きをリプレイする。
何度も何度も自分の行動を思い出す。


(ない··床にも落ちてないみたいだし···でも)


確かに百合香は“桜”を使用していた筈なのだ。

それはバインダーに挟められた真っ白な用紙に浮かび上がるロイヤルブルーのインクがそれを証明しているのだから。


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