ブルーブラック2
その後百合香はずっと気に掛けていたが“桜”が見つかることはなかった。
閉店後、どうしても見つけたくて百合香は丹念にカウンター周りを這って探していた。
「どうかしたの?探し物?」
「あ··ちょっと。すぐに帰りますから先に上がっていて下さい」
坂谷が心配そうに覗いて百合香に声を掛けたが百合香は智に知られるのが申し訳なくて公にしたくなかった。
そんな雰囲気を察してか坂谷もそれ以上は踏み入れなかった。
「そう··?じゃあ、お疲れ様」
「はい。お疲れさまでした」
坂谷が後ろ髪ひかれるように去って行くと、百合香はまた探し始める。
「絶対戻ってきてくれる。···絶対」