ブルーブラック2

「そ、そうよね··」
「···どうかしました?」
「いえ、なんでも―――」
「あれ?神野さんは今日あのペン持ってないんですか?」


それは美咲の策略だった。


まさか、自分が横取りした“桜”の話題に自ら触れる筈などない―――。


そう思わせる為の、敢えてのことだった。

そして百合香は見事にその策略にハマってしまう。


「え、えぇ··ちょっと··忘れてしまったの」
「そうですよねぇ。失くしたのかと思いましたけど、神野さん相当大事にしてましたもんね」


あまりに堂々と『自分も買った』と公表し、さらには百合香が手元にないことを指摘する。

それらは百合香に“美咲は犯人ではない”と思わせるには十分だった。


且つ、百合香の性格上、誰かを問い詰めたり疑ったりすることなどできない。

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