ブルーブラック2

「じゃあ、お疲れさまでしたぁ」
「うん。気をつけて··」


全く怪しいところも見せずに美咲は先に出ていった。

閉じられた美咲のロッカーに視線を向けると百合香はまた色々と頭の中を張り巡らせる。


自分の“桜”は自分がよくわかる。

同じ製品でも一本一本模様が違うし、何よりペン先の感じを百合香の手が覚えている筈だ。

しかも、誰にでもわかるような“証拠”もあるのだ。


クリップに入れた【Yurika.Y】の文字が――――


しかしその文字は距離が少しでもあれば簡単には見えない程控えめだ。
色も入っていない文字はクリップと同化して見えてしまう。

百合香はもう美咲にそれを見せてとは言えない。

そして無断でロッカーを開けることもできない。


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