ブルーブラック2

「じゃあ、気をつけて」
「うん。色々ごめんね」


駅で椿と別れた百合香は少し早い時間に会社に着いた。

まだほとんどの社員が来ていない事務所を通過してロッカー室へと入った。


(今日はイベント初日だ。気持ちを切り替えよう)


百合香は目を瞑り、大きく息を吐くと鏡の前で笑顔を作ってロッカー室を後にした。

事務所に再び出ると、丁度智が出社していてデスクに鞄を置いているところだった。


「あ···」
「···おはよう」


百合香は気持ちを切り替えた筈なのに一瞬にしてまた昨夜のことを思い出してしまう。
顔を合わせることは分かっていたことなのにこうも上手く接することが出来ないものなのかと自分で自分に溜め息をつきたくなる。


比べて智の方がやはり大人。
百合香から見た感じだと至って普通どおりに挨拶をされたように思える。


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