ブルーブラック2
ドキリ、とした。
なぜ何も知らない、少ししか時間を共にしていない筈の金山が自分の胸中を言い当てるのか。
まさか智が言う筈もない。
じゃあどうして?
百合香は持っていた万年筆をより握りしめるようにすると、自分の文字から金山へと視線を上げた。
「―――“どうして”という顔をしているね」
「!」
何から何まで悟られて百合香はどうしていいかわからないままただ目を見開いて金山を見るだけだ。
そしてそんな百合香の視線を受けて金山は静かに口元をゆるめて、手元の紙に人差し指を添えた。
「この字は、幾分か力が入っている。緊張状態にあるね…神野さんはそんなに筆圧強くなかった筈だ。」
金山は再び百合香を見据えて穏やかにそう言った。