ブルーブラック2
今度はゆっくりと息を吐き、特に意識するのではなくて、“いつもどおりに”を心がけてもう一度ペンを滑らせる。
すると先程のようなムラのあるインク色ではなく、ほぼ均一に、それでいて綺麗な濃淡をその紙に現わしてくれた。
それと同時に自分自身も均されるように波風立った感情が、小波のように落ち着いていく。
「ああ、全然違うと思わないかい?字も―――心も。」
「――はい。ありがとうございました」
そうお礼を言うと、万年筆のキャップを静かに回し閉めてそっと胸ポケットに戻した。
「···さて。明日の為に帰って休むとするか!」
「ふふ··そうですね」
軽く伸びをしながら金山が思い出したように言葉を付け足した。
「あ、それ、名前は決まってるのかい?」
「···名前は―――――」