ブルーブラック2
そして、百合香の手のひらに、百合香が待ちわびていた感触のものをそっと乗せた。
「――――“桜”」
震える手で、震える声で小さく百合香がそう言った。
もうずっと、会えなかった愛しい人に再び会えたような喜び。
そのかけがえのない自分の分身の“桜”が今、智の手から舞い戻ってきたのである。
「智さん···これ··どうして―――」
熱く潤む瞳の百合香の問いに智は冷たい視線を美咲に送った。
「!!!」
百合香の手にあるものは自分が横取りした“桜”と気が付いた美咲は智から目を逸らして自分の髪の毛をしきりに触って俯いた。