ブルーブラック2

「百合香は優しいから問い詰めないけど、俺は違う」


騒ぎ立てる美咲を見下ろして低い声で静かに智はそう言うと百合香の手のひらから“桜”を手にした。


「···?」


顔をしかめながら、だけど不思議そうに美咲は智の手にある“桜”に視線を移す。

すると智はゆっくりと指先で“桜”を回転させて光が反射して輝く位置でそれを止めた。


「気が付かなかった?」
「な、なにが···」
「――まぁ無理もないか。対して興味もないだろうから。···ここ」


そう言われて美咲は恐る恐る指をさされた部分を確認する。


「クリップに刻印されているのは、彼女のネームだ」


そこには確かにあった。




【Yurika.Y】の文字が。


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