ブルーブラック2
「意外、ねぇ」
坂谷がショーケースに肘をついて万年筆を眺めながらそう答えた。
「オレ、百合お姉さんってもうちょっと優しそうな··なんていうか··似たような男の人のが似合っていた気がしたから」
「似てるだろ」
坂谷の切り返した一言に隼人は首を傾げた。
「あんな、真っ直ぐなとこ―――ほんとそっくり」
「真っ直ぐ···?」
「仕事にも、好きな人にも」
坂谷が出しっぱなしになっていた一本の万年筆を手に取ってかざす様にして仰ぎ見た。
隼人は今まで色んなフィルターを通してしか智を見ていなかった為に、たくさんのことを見落としてきたのかもしれないと思った。
「早く拭け」
「坂谷さんは色々曲がってますよね···性格とか」