ブルーブラック2
「斉藤は、この後予定は?」
「へっ···?」
自分の元に来てからずっと見られたまま動かない智の口から突拍子もない質問が投げかけられた隼人はつい気の抜けた返事をしてしまう。
洗浄しかけの万年筆を手に持ったまま、隼人は智の顔を見た。
「予定ないなら打ち上げ、来るか?」
確かに相手は店長で、上司で、大人。
だけどこんなにも真っ直ぐにぶつかってこれるものだろうか。
裏があるのでは···普通ならそんな警戒をしそうなものだが智からは全くそんな気配を感じさせない。
自分はつい昨日まで、あんなにひっかきまわして鬱陶しい存在である筈なのに。
隼人はそんなことを考えていてすぐに返答をしなかった。
すると、智がようやく靴を鳴らして動いた。