ブルーブラック2
タクシーの中なのに。と思いながらもドキドキと何かを期待してしまう百合香をよそに、「着いたよ」と智にはただ言われただけだった。
マンションのエントランスに向かってエレベーターを待つ。
隣に立つ智に相変わらず緊張しながら百合香は口を開いた。
「智さん――···家に帰ったら話、聞いてくれますか?」
ウィーンというエレベーターの音が響く中、智は百合香を見て初めは目を丸くしていたが、すぐにまたいつもの笑顔に戻って答える。
「―――勿論」
そう言って智は百合香の手を取った。
このあと少しの距離を手を繋いで帰る。
百合香は本当に嬉しくて、幸せで、智への想いが止めどなく溢れていた。