ブルーブラック2

「ちょっ···あ、智さん···?」


綺麗な顔立ちをした人が距離を縮めてくる。
百合香はそれに対して何もできずに戸惑う声を出すだけ。


「あの··まだ、その―――···」


百合香はやんわりと断ろうとするが、動けない。

智の漆黒の瞳は昔から百合香を支配する。
その瞳に捕まると、心も思考も全てを奪われ、逃れられないのだから。


「―――わかってるよ」
「あ···」


百合香はまだ“女の子の日”、そういう事情を“わかっている”と言われれば安心するものの非常に恥ずかしい思いもする。


「―――あ··ッ」


完全に油断していた百合香は声を漏らした。



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