ブルーブラック2
*
閉店間際、事務所にいる智の所に来たのは江川だった。
「あー疲れたー」
「一人先に上がってくるとはいい御身分だな」
「…ちょっとこっちのパソコンに用事あったんだって!」
「へぇ」
いつもと同じようなやり取りをしながら江川は自分のデスクについた。
「――あれからどうだ?」
江川が少しトーンを落として視線はパソコンに向けたまま聞いた。
「…まぁ、とりあえずは…“桜”も取り返したし」
「そんで?彼女は?」
「“辞める”と申し出てきた」
「…そりゃそうだろうな。ていうか辞めるっつーよりクビとかじゃなく?」
いつの間にか江川は視線も体の向きも智に向いていた。
智の態勢は少しも変わらないまま頬杖をついて目の前一点を見つめている。
「…この流れでクビにしたら“辞める”っていってる人間にとって都合がいいだろ」
「そうかもしれないけど…でも、一緒に働く百合香ちゃんがやりづらいだろ」
「・・・・・」
丁度沈黙になりかけた時に事務所まで閉店を知らせる音楽が聞こえてきた。
「さすがに売場に戻ったら」
「…へいへい」
そう言って江川は席を立って智に背を向けて事務所を出た。
閉店間際、事務所にいる智の所に来たのは江川だった。
「あー疲れたー」
「一人先に上がってくるとはいい御身分だな」
「…ちょっとこっちのパソコンに用事あったんだって!」
「へぇ」
いつもと同じようなやり取りをしながら江川は自分のデスクについた。
「――あれからどうだ?」
江川が少しトーンを落として視線はパソコンに向けたまま聞いた。
「…まぁ、とりあえずは…“桜”も取り返したし」
「そんで?彼女は?」
「“辞める”と申し出てきた」
「…そりゃそうだろうな。ていうか辞めるっつーよりクビとかじゃなく?」
いつの間にか江川は視線も体の向きも智に向いていた。
智の態勢は少しも変わらないまま頬杖をついて目の前一点を見つめている。
「…この流れでクビにしたら“辞める”っていってる人間にとって都合がいいだろ」
「そうかもしれないけど…でも、一緒に働く百合香ちゃんがやりづらいだろ」
「・・・・・」
丁度沈黙になりかけた時に事務所まで閉店を知らせる音楽が聞こえてきた。
「さすがに売場に戻ったら」
「…へいへい」
そう言って江川は席を立って智に背を向けて事務所を出た。