ブルーブラック2
「そうやって逃げることを繰り返すのか?」
智の言葉に美咲は何も反論できずに俯いて唇を噛んだ。
「ーー許さない」
その声は智ではない。
勿論美咲でもない。
美咲が顔を上げて反射的に振り向くとそこに立っていたのは百合香だった。
「途中で投げ出すなんて、許さない」
そういう百合香の目は、あの穏やかで優しいものではなかった。
厳しく、見透かされるような瞳。
その目で見つめられると美咲はいよいよ何も口に出来なくなった。
「今すぐやりたいことがあるのなら止めない。でもそうじゃないのなら逃げないでやり遂げるべきだわ。仕事でも、なんでも」
あの柔らかな雰囲気の人と同一人物かという位に鋭く射るような言葉が百合香の口から出たことに美咲は百合香から目を離せなかった。