ブルーブラック2


「わぁ・・・もうすぐ9月なのにまだ青々としてますね」


翌日の定休日には久しぶりに少し遠出をして山へハイキングに出かけてきていた。


「あとひとつきしたらここも一面色を変えるんだろうな」


普段歩かない山道で少し息があがりもするが、ちょっと上に来ただけでも空気と景色が違うことに百合香も智も疲れを忘れる。


「あ、あれ」
「ああ、山桜だ」


それは少し周りのものとは違っていた木。
桜と名のつくものにしては、夏の為か深く黒っぽい緑を携えていた。


「春に来たら綺麗な桜が見れるんだ・・・」
「そうだな」
「―――昨日のインクと似たような花かな?」


無邪気に笑いながらその木を見上げて百合香はそう言った。


「あ・・・でも、今のこの色も」
「少し昨日百合香がくれた俺のインクの色に似てる部分、あるかもな」


そう言って前に立っていた百合香に並ぶようにして木を見上げると智は百合香の手を取った。

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