ブルーブラック2
「こんにちはー」
ふとその挨拶の声に振り返ると、二人の視界には何もなかった。
ただ人の声がしたのは確かだし気配も感じる、とすぐに視線を落としてその主が誰なのかわかった。
「こんにちはー」
「こんにちは!」
「こんにちは」
もう一度そういったのは見知らぬ小さな男の子。
百合香と智はその小さな子に返事をした。
「ゆうー!一人で行かないの!あ、すみません・・・何か迷惑でも?」
「いえ」
「挨拶をしてくれたんです。ねぇ?ゆうくん」
後ろから母親らしき人が追ってきて二人に声を掛けるとその男の子と手を繋いで笑いながら頭を下げて先を歩いて行ってしまった。
そんな後ろ姿を黙って見ていると、男の子が急に振り向いて手を振った。
「・・・挨拶出来て、いい子でしたね」
「ああ」
そうして二人は繋いでいる手をきゅっと握り直した。